エアーズロックとケアンズは、言わずと知れたオーストラリアのメジャー・デスティネーションだ。世
界最大級の一枚岩と奇岩群のウルル-カタジュタ国立公園、そして世界最古の熱帯雨林と世界最大の珊瑚礁のグレートバリアリーフという世界遺産の誘客力と知名度は、MICEでも大きなポイントとなる。オーストラリア政府観光局(TA)は3月中旬、旅行会社の団体旅行担当者を対象にFAMツアーを実施。両都市の観光の魅力を体験しながら、そこで活用できるMICEプロダクトを確認する研修旅行となった。
大自然の懐に飛び込むMICE
エアーズロック、素材の活用がポイントに
エアーズロック(ウルル)は高さ346メートル、周囲9.4キロもある世界最大級の一枚岩だ。これと、
高さ546メートルのマウントオルガを含むオルガ岩群(カタ・ジュタ)が最大の見どころで、ウルル-カタ・ジュタ国立公園として世界複合遺産に登録されている。ポスターやパンフレットでお馴染の姿だが、実際に対峙するとその存在感に多くの人が歓声をあげる。
この絶景をMICEに活かせることが、エアーズロックのポイントだ。ハイライトのサンセット鑑賞はパ
ブリックビューイングエリアのほか、特別会場でのサンセット観賞とビュッフェディナー、星空観賞が付く「サウンド・オブ・サイレンス」、料理が4コースディナーとなる「タリウィル」と予算に応じて使い分けができ、特別会場は貸切が可能。
今回は昨年12月に開始したプログラム、キャメルライドとサウンド・オブ・サイレンスを体験した。砂
漠をラクダで歩く風情を楽しみ、シャンパンを片手に夕映えのエアーズロックを鑑賞。その余韻のまま屋外でのディナーは、まさにエアーズロックならではの経験だ。エアーズロック・リゾートを運営するボヤージズのアジアセールスマネージャー、ジェーン・クリステンセン氏によると、貸切なら自由度が高く、某自動車会社のインセンティブツアーでは会場にその企業の車を運び入れ、好評だったという。
会議やイベント前後の観光にはウルルとカタ・ジュタでのブッシュウォークのほか、アボリジニアー
トに挑戦する「ドットペインティング体験」もあり、これはチームビルディングに使えると好評だった。実際のインセンティブツアーでも、オーガナイザーの企業理念をドットペインティングで表す企画が行なわれたという。
現地ツアーを扱うAATキングスのセールスマネージャーの
近藤貴博氏は「パッケージツアーではサンライズとサンセット観賞、ブッシュウォークの1泊2日が主流だが、会議やイベントが入るMICEは2泊がおすすめ。ウルルとカタ・ジュタの2つをどう見せるかがカギになる」と話す。ある参加者が「世界遺産や自然だけではなく、現地で聞いたエピソードを盛り込んだ企画を作
りたい」と感想を話してくれたが、こういう視点もポイントになりそうだ。
なお、エアーズロックは世界遺産地域に隣接して空港とリゾートがあるため、空港/リゾート間は車で約10分、リゾート/エアーズロック間は約30分。日本からは乗継が必要だが、自然の造形美が売りのデスティネーションでこれだけのアクセスの良さは珍しく、参加者のモチベーションが異なるMICEには好条件になるだろう。
2つの世界遺産を基盤に多彩な可能性
ケアンズとポートダグラス
ケアンズに移動すると、市街の賑やかさと豊かな緑に驚く。ケアンズも世界遺産の熱帯雨林(クイ
ーンズランド州湿潤熱帯地域)とグレートバリアリーフを軸にした自然の体験型アクティビティが多いが、エアーズロックとは内容も雰囲気も全く異なる。
たとえば、「レインフォレステーション・ネイチャーパーク」は自然、ワイルドライフ、アボリジニ文化の3テーマで構成するテーマパーク。営業時間後には貸切が可能で、水陸両用車のアーミーダックで夜の熱帯雨林を行く特別ツアーもできる。日本からは400人程の団体が多い
が、最大2000人まで受入可能。最近もニュージーランドの約2000人の団体に専用のパーク営業と団体用レストランで夏祭り風屋台のアレンジを行ない、賑わったという。スカイレールで熱帯雨林を眺めながらキュランダへ行き、レインフォレステーションでのイベントに移るという日程が組めそうだ。
また、ケアンズから40キロ北にある「ハートリースクロコダイルアドベンチャーズ」も、営業時間後の貸切が可能。世界最大級のイリエワニをボートクルーズで
探しながら鑑賞し、餌付けショーも見られる。ニシキヘビや子ワニとの写真撮影やカエルを吹き戻しで追いながらゴールに導くゲームなど、爬虫類とのユニークな触れ合いも可能だ。
ケアンズの北70キロにあるポートダグラスも、雰囲気のある大人向けのリゾート施設がそろい、MICEの可能性が高い。この近郊のモスマン渓谷に昨年6月、
「モスマンゴージセンター」が誕生。土地を所有するアボリジニ、ヤランジ族がオーナーで、運営はボヤージズが担当。世界遺産と同じ熱帯雨林が広がる渓谷を、アボリジニのガイドが伝統的な生活スタイルを紹介しながら歩くツアーを行なっており、日本語の案内を作成しているところだという。
もう一つの世界遺産、グレートバリアリーフではポンツーンの貸切ができる。今回はポートダグラス発のクイックシルバーを利用。ケアンズ/ポートダグラス間はヘリコプター飛行も可能で、熱帯雨林やグレートバリアリ
ーフに続く海を見ながらの空中散歩は、30分ながら特別感を感じられる体験となった。今回利用したgbrヘリコプターズはグレートバリアリーフのポンツーンへの送迎も行なっており、クルーズ会社とともに往路はヘリコプター、復路はクルーズというコンビネーションも実施している。
エアーズロック、ケアンズのホテル、コンベンション施設
MICE向けの新プロダクトも誕生
エアーズロック・リゾートは昨年10月、「ウルル・ミーティング・プレイス」をオープン。プリファンクショ
ンエリアを挟むように、最大420名と306名の2つの宴会場があり、Wifi利用も可能だ。エアーズロック・リゾートでは本格的な施設の誕生を機に、日本市場でのMICE誘致を開始するという。
リゾート内のホテルはクラスの異なる3軒がある。中間の4.5ツ星の「デザート・ガーデン・ホテル」は、「エアーズロック・ビュー」の客室がリゾート内で最多の19室あり、5ツ星の「セイルズ・イン・ザ・デザート」に次いで
MICE開催が多い。また、リゾートエリアから5分ほど離れた場所には、15棟のテントからなるラグジュアリーな「ロンギチュード131°」がある。客層にあわせて滞在先を別に手配することも可能だ。
一方、ケアンズで参加者が注目したのは、「ケアンズ・コンベンション・センター」だ。最大5000名と2330名の2つの大ホールと6つのコンファレンス・ルーム、9つの会議室からなり、収容力と機能性はもちろん、木目を基調にしたケアンズらしいデザインにも参加者は好印象を抱い
ていた。食事もおいしく、会議からイベントまで一ヶ所で完結することも可能だ。
ビジネス・イベント・ケアンズ&グレートバリアリーフではこのほか、市内の公園「フォーガティパーク」などユニークベニューも積極的に開発している。もちろん、プルマン、シャングリ・ラ、ヒルトンといったホテルにも会議室や宴会場が整い、イベントができるスペースも多い。ケアンズでは4000人の団体を1000人単位で受け入れた実績も
あるといい、幅広いアレンジができそうだ。
エアーズロックとケアンズでは雰囲気が大きく異なるが、自然保護に力を入れ、先住民の文化を尊重して観光サービスを行なっている点は共通だ。エシカルな風潮が広がる現在は、切り口の一つになるかもしれない。もう一つ、日本人や日本語が話せるセールス担当者が多いことも同様だ。
今回は一般のツアーで訪れる観光地の視察がメインであったが、「(MICEが)できる素材は多くあ
った」という感想が聞かれた。ぜひ現地担当者と積極的にコンタクトを取り、デスティネーションの力とオーガナイザーの意向を組み合わせて、特別な体験になるような企画を作り出してほしい。
トラベルビジョンの記事より引用。
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